「屋根工事の単価を教えてくれれば自分で計算する」言ってきた港北区のお客様。
現在の屋根はアスファルトシングル、瓦屋根から葺き替えたそうです。
雨漏りしてきたので再葺き替えを考えたようですが「屋根の撤去費用、新しい屋根材はガルバリウム鋼板、野地板工事費用、ルーフィング、棟工事、雪止め、雨押えの単価が知りたい」教えて欲しいとの事。
前回の葺き替えでも同じように自分で計算して工事業者を選んだようですが「屋根工事の単価を比較する事に何の意味があるのか?」と感じずにはいられません。
屋根工事は、工事内容で単価が大きく変わってしまうものです。
単価を比較するより担当業者さんから一度説明を受けるようお勧めしました。
2階屋根の状況。
1枚目の写真:これはケラバという役物で、この下に捨板を入れ込んであるため決して釘を打ってはダメな場所です。
捨板は屋根材裏面に入り込んだ雨水を雨樋まで流す役目をする重要な役割があり、釘が貫通すると雨漏り原因になります。
2枚目の写真:雨漏りで野地板がボロボロに腐っています。
野地板が腐った原因は、ケラバに打たれた釘が捨板を貫通したからだと思っていましたが、そもそも捨板が取り付けられていませんでした。
これは完全な手抜き工事です。
ご注意:ケラバ工事という見積項目があっても捨板が取り付けられていない場合もあります。
3枚目の写真:前回、瓦屋根を葺き替えた時の桟木と野地板が下に残っていて、その野地板も腐っていました。
捨板を取り付けてなかった。
左写真:前回の屋根工事で取り付けられていなかった捨板について説明する写真です。
この写真は新築時のスレート屋根で、捨板がきちんと取り付けられていましたが雨漏りしていました。
その理由は、スレート屋根本体を取り付ける時に行うべき「肩落とし」という加工がされていなかったからです。
右写真はガルバリウム鋼板屋根の実例です。
右側の壁際部に取り付けるべき捨板が取り付けてられていません。
左側のケラバ部には捨板が取り付けてられていますが、雨水が流れる部分に捨板の内側に固定するネジが打たれています。これも雨漏りの原因です。
ご注意:捨板は一例でしかありませんが、屋根の見積もり項目に壁際工事と書かれていても、必要な役物がきちんと使われているのか?
また、雨水が正常に流れるための加工がされているか?によって見積金額は変わってきます。
これはガルバリウム鋼板屋根でも多く見られますが、きちんと直すには工事を一からやり直す以外に方法はありません。
2階屋根の葺き替え工事
腐った野地板を構造用合板に張り替えてガルバリウム鋼板屋根の横暖ルーフに葺き替え。
屋根廻りの破風・鼻隠部分には金属板が張られていましたが錆びで傷んでいたため新しく張り替え、雨樋も取り換えました。
1階屋根の状況。
1枚目の写真:1階屋根のアスファルトシングル屋根、壁際に雨押えを取り付けておらず屋根と外壁の隙間にコーキングを塗っただけ。
そもそも、アスファルトシングル屋根を施工してはダメな屋根勾配なのですが、壁際工事もいい加減だったので雨漏りしていました。
2枚目の写真:トタン屋根の上に野地板を重ね張りしてありましたが、ボロボロに腐っていました。
3枚目の写真:その結果、屋根の骨組みまで腐っていました。
壁際雨押えの役割。
こちらのアスファルトシングル屋根には雨押えが取り付けられていませんでしたが、雨押え(壁際水切り)とは屋根から外壁へと続く部分に取り付ける役物で、外壁を流れ落ちてきた雨水が屋根裏面に入りむのを防ぐ役割があります。
左写真は、こちらのお客様宅と同じアスファルトシングル屋根で水平方向・流れ方向の両方に取り付けられています。
右写真は、ガルバリウム鋼板屋根に雨押えが取り付けられていなかった実例です。
雨押えを取り付けずに壁際の隙間にコーキング処理して完成予定でした。
ガルバリウム本体の下に捨て板が取り付けられていれば雨漏りの可能性は低くなりますが、実は捨板も取り付けられていなかったのです。
工事金額を抑えればお客様から依頼を受けやすくなるとはいえ、あまりにもやりすぎな気がします。
でもガルバリウム鋼板屋根では同じような手抜き工事が信じられないほど多く行われています。
1階屋根の葺き替え工事
骨組みまで腐った屋根を一度解体し新しく作り変えました。
1階屋根は勾配が緩いため2階と同じ横葺きタイプのガルバリウム鋼板は施工不可、縦葺きタイプのスタンビーに変更。
屋根廻りの木部を全て新しくして、木部はガルバリウム鋼板の平板を加工してカバーし、雨樋も取り換えました。
屋根以外の工事。
1階にはアスファルトシングルの他にスレート屋根もあり、そこも2階と同じ屋根に葺き替えました。
今回お客様は、屋根が雨漏りした原因が見積書を見ても分からない工事内容の違いにあったこと。
きちんと工事してくれる業者に頼んでいたら野地板まで腐らせることがなく、今回の工事費用を大幅に減らせた事。
見積単価の安い業者に工事を頼んでも工事内容が悪ければ結局損をする可能性があると分かったそうです。
屋根工事に満足頂いたお客様から右写真の玄関庇の拡張工事、外壁塗装、ブロック、フェンス取り換えなど外回りを全て新しくする工事など当初予算の3倍もの追加工事をご依頼頂きました。
今回のような事例は決して特別なものではありません。
現在多く使われているガルバリウム鋼板屋根では手抜き工事が多く、工事完了直後からの雨漏りトラブルも増えています。
ガルバリウム鋼板屋根は、業者によって工事内容が全く異なりますので目先の金額に惑わされるのではなく20年、30年経っても問題が起こらない工事をしているかどうかで業者を選ぶことをお勧めします。